1001A

ルーツ

オヤジの背中

「俺が悪かった」・・・

美容師を目指して半年後、家を出て一人で住むようになって、突然起きた事件

オヤジは、酒を飲んで、兄貴が風呂に入っているときに、
包丁を持って襲ったのだ。兄貴はとっさに身をかわし、オヤジのわき腹を一蹴り!事なきをえた。

しかし、オヤジのダメージはひどく、ベットに横たわっていた。
そばでお袋は、泣いていた。

「なんで、兄貴を・・・」「よう、覚えてない」「俺が悪かった」

いきなり衝撃な話から始まった、「オヤジの背中」

3人兄弟の末っ子に生まれた僕は、
今の生活と程遠い少年時代を過ごしてきました。

日本中の多くの家庭が貧しかった時代です。
明治生まれのばあちゃんに、昭和初期生まれの親を持ち、
戦争を経験しているその人達の行動パターンは、
平成の時代にはあまり残っていません。

しかし、大切な《何か》が私の心の中には、脈々と流れています。

決して立派ではなかった、酒のみのオヤジが僕に残してくれた、
オヤジにしか伝えられなかった、我が子への思いを、

私が勝手に話していきます。

オヤジって、実は怖い存在。なんて結構思われている時代がありました。

今もそのような、お父さんもいるのでしょうが、随分少なくなったようです。

私のオヤジはというと、日頃全く怖くありませんでした。

しかし、お酒が入ると、人が変わっていきました。
今ではあまり見る事のない、酔狂(すいきょう)が始まるのです。

これは、酔ってお袋を、言葉で、ぼろくそにいったり、日頃の不満をぐちぐち言うのです。

時には暴力をふるう事もありました。
今ではDVとでもいうのでしょう。

だから、酔ったオヤジは大嫌いでした。
よく親戚の家や、お袋の友達の家に逃げていったものです。

そして翌朝に帰ったり、ひどい時は、一ケ月ぐらい帰らないときもありました。今思うとただの夫婦喧嘩です。

しかし、酔っていないオヤジは好きでした。

だって、よく船に乗せて、魚釣りには連れて行ってもらえるし、
そこで船酔いしてもとても優しかったし、
絶対怒ったりしなかったからです。

私の記憶も途切れ途切れですが、強烈に残っているのは、
遥か岸から離れた、海の上で蜃気楼を3度見たことです。
これは壮大でした。そしてとても神秘的でした。

そして、命がけの経験もさせてもらいました。

10歳の時、突然海の上で天候が変わり、嵐になった時、転覆の危機を逃れる為命綱もつけず、船の外にしがみつき、
大シケの海から生還した事など、

強烈に死ぬことへの恐怖も体験させてもらいました。

幼少期の体験は、のちの人間形成にどこか大きく影響を及ぼす事は、よく言われることですが、

私が現実を超えた空想物などが好きなのも
このあたりの体験から来ているのかもしれません。

子どもって、親が笑っている姿にはすごく安心させられるし、
嬉しいものなのです。

しかし、そんなオヤジも、私が中学校に入ると、立場が逆転してしまいます。

次回につづきます

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